漆黒からオレンジ色へとグラデーションする、夜明け前の空を飛ぶ飛行機から、パラシュートがついた箱が降ってくる。
影絵のような光景から夜が明けると、箱の落ちた先がペルシャ湾に浮かぶ小さな島だったことがわかる。そこへボートで一人の女の子がやってくる。
今日は選挙。その箱は投票箱で、女の子は選挙管理委員なのだ。
女の子は投票箱を抱えて、その島中を回る。細い声で「私たちの票には社会を変える力がある」と投票を呼びかけるながら。
その横には、選挙の不正を防ぐとの命を受けた島の無骨な兵士が、しぶしぶ彼女のお伴をしている。小娘にも選挙にも無関心。
微妙な二人の対比が、何とも言えない面白さを醸し出す。
さらに有権者たちが、これまたいろいろ。
どの候補者も知らないと棄権する者、数十人の妻を連れていて、彼女たちのぶんを自分一人で投票しようとする者、神に投票しようとする者……。
続きを読む "一票のラブレター" »