ソフィア・コッポラの監督第3作目「
マリー・アントワネット」。
ベルサイユ宮殿で贅沢三昧の生活を送る王妃というイメージのもと、さまざまなエピソードが語られ、それらの中には誤解や偏見も散見されるマリー・アントワネット。
イギリスの歴史文学者アントニア・フレイザーによって、彼女に新たな光を当てた伝記小説
マリー・アントワネット」が2002年に発刊。
宮廷の慣習や政府の陰謀に対して、何の心構えもないままにフランス王室に嫁いだ一人の10代の少女としての彼女の姿を浮き彫りにしている。
この等身大の少女・マリーに着想を得て制作されたのが本作。
わずか14歳で嫁ぎ、18歳で王妃となり、誰にも理解されなかった孤独な女性・マリーの心の揺れを丹念に描き出す。
等身大のマリーを演じたキルスティン・ダンストもキュートで、どこかポップさを感じさせる宮廷の雰囲気と相性がいい。
フランス政府の全面協力を得て、ベルサイユ宮殿を自在に使用しての撮影が実現。鏡の間での逸話など、歴史上の出来事が、実際の場所で再現されている。
ある意味、究極のセレブだったマリー・アントワネット。
その豪遊ぶりは圧巻と感じられた。
世の中のことを何も知らないから遊興にふけったのではなく、孤独と葛藤、ストレスに押しつぶされるようにして放蕩へと逃げていった。
どこまでも人間くさいマリー・アントワネットに、人間存在の哀愁がにじんでいる。