南北戦争下、カンザス州とミズーリ州の州境の森に、南軍のゲリラがキャンプを張っていた。
18歳のジェイク(トビー・マグワイア)は、黒人のホルトを含む4人のグループで行動していた。
銃撃戦の演出が素晴らしい。
旧式のピストルの発射音、壁やガラスを貫通する音、そして撃たれた者の倒れ方。これほどリアリティーのある銃撃戦は見たことがない。
また、数百人の南軍ゲリラと北軍の騎馬戦は圧巻だ。その疾走感は爽快で、思わず「いけ~!」と叫びそうになった。
戦闘シーンも見事だが、この映画はアクション映画ではない。
1861年のアメリカを忠実に再現している。誇張のない演出は、誠実というか、真摯というか、丹念に丹念に作られており、ハリウッド的なエンターテインメント性はいささかも感じられない。
それがまた独特の味わいを醸し出している。
北軍に包囲され、窮地に陥ったゲリラは、ローレンスという街を襲撃し、すべての男性を北軍とみなして虐殺する。
これは実話であり、殺された男性は、兵士でも北軍でもなかった。
ジェイクとホルトは、狂った仲間たちを見ながら、殺戮には手を貸さなかった。
戦争という狂気は、人間の善性を麻痺させる。そこでは、まったく無意味で陰惨な殺戮が繰り返される。いかに戦争が愚かなことか、映画は痛切に訴えてくる。
また、ホルトが慕う主人ジョージが死に、ホルトは悲しみにくれるのだが、ホルトは初めて「自由」を感じる。南北戦争の争点であった奴隷制度が、どれほど黒人の心を縛り、苦しめていたのか。さまざまなシーンで描かれている。
こんな正統派な映画は見たことがない。
なんのてらいもなく、男の友情や人を許すこと、家族愛が描かれる。それなのにクサくない。それほどに完成度が高いのだ。