くせのある役をこなすことについては定評がある2大スター、トミー・リー・ジョーンズとサミュエル・L・ジャクソンの演技が見物である。
「逃亡者」で冷徹な連邦保安官役だったジョーンズは今回はアルコール依存症の海兵隊弁護士ヘイズ・ホッジス大佐を、「パルプフィクション」で哲学的な殺し屋を演じたジャクソンは海兵隊屈指の歴戦の勇士チルダーズ大佐を演じている。
中東イエメンでアメリカ大使館が大規模なデモ隊に包囲され、大使家族を救出することになる。
そのときチルダーズ率いる海兵隊は、銃撃で一般市民を80人も死亡させてしまう。世界中から人道主義を踏みにじる行為として非難され、アメリカの威信はどうなるのか。そのときとった行動は軍人として正しい選択だったのか。
チルダーズは軍事法廷で裁かれることになる。
テーマは忠誠心。
チルダーズはアメリカを愛し、誠実に海兵隊につくし、自分が正しいと信じたことを実行する真の軍人だ。
しかし、戦時下でとる行動を裁くのならそれはすべて殺人だ。人を殺すという行為はだれもが有罪なのは明白であるが、それが国を守るために敵を倒すという大義からなのか、それとも戦友を守るためなのか。さらに、そのために一般人を殺していいかとなると話は別である。
ベトナムでいっしょだったホッジスとは命をかけあった戦友。
人間として自信をなくしている3流弁護士ホッジスは、友の真実を見極めるためにイエメンに足を運ぶのだった。
“軍隊”をもたない日本の、戦争経験のない世代にも、軍人としてとるべき行動の是非が迫ってくる。
元アメリカ海軍長官だったジェームズ・ウエッブの原案をもとに脚本が作られ、ベトナムでのひとコマ、大使救出作戦の場面など、嘘のないように俳優たちに軍事教練したという。
ジャクソンが孤立無援の役柄を毅然として演じ、友情のために立ち上がる役を演じるジョーンズにしても、どんな個性のある役柄でも見事にこなす素晴らしい役者として印象に残る作品だと思う。