真冬の新潟県、雪に覆われた日本最大のダムをテロリストが占拠する。
テロリストは、ダムの爆破による水害で国を脅し、50億円を要求。猛吹雪のため、だれもダムに近づくことができない。
ダムの職員が人質になるなか、ひとり自由の身の富樫(織田裕二)が、テロリストに挑んでいく。
この映画の最大の成功の因は、脚本にあると思う。
原作は、ベストセラーとなった同名小説。原作者の真保裕一が、自ら脚本を書いている。
見るものの予想を裏切り続ける物語展開は卓抜。なかでも、クライマックスのどんでん返しの連続が楽しい。
演出で「うまい!」と感じた点は、射殺シーンのクールさ。
こうしたシーンは、どうしても嘘臭くなりがちだが、ここをさらっと描いたところに好感がもてる。
キャスティングもなかなか良い。
特に、テロリストの首領の佐藤浩市がはまり役だ。もともと演技力のある役者だが、癖のある難しい役を自然に演じている。
ほかの役者も、変に主張していない。キャスティングがそれぞれにマッチしたと言える。多少、ん!? と感じるような人はいるが、許せる範囲だろう。
さて、この映画をジャンル分けするとしたら、アクション映画になるのだろうか。もともと設定が“ダム”ということもあって、A・シュワルツェネッガーの主演作品などと比べれば、それほど派手とは言えない。むしろ、銃撃戦や白兵戦などの緊張感を楽しむべきだろう。
感心したのは、キャラクターの設定。
主人公の富樫は、雪山で友人の吉岡(石黒賢)を亡くしている。吉岡は、「もし、自分の身に何かあったときは、婚約者の千晶(松嶋菜々子)を守ってくれ」と告げていた。千晶は、テロリストの人質となっている。富樫は、千晶と会ったことはない。
恋人や妻のために頑張るヒーローは山ほどいるが、亡くなった男の友情のために命をかけるというキャラクターはちょっといない。ここまで純粋な男の心には、男もほれる。ほれるとまではいかなくても、好感をもってしまう。このあたりに、原作及び脚本の真保裕一のうまさを感じた。そうです、ラストシーンは、ホロッとさせられます。
けっこう、ドキッとさせられるシーンもあるが、その効果音とBGMがまたいい。