ロベルタ(メリル・ストリープ)が音楽教師として、ニューヨークでも指折りの物騒な地域「イースト・ハーレム」の小学校に、50挺ものバイオリンを抱えて乗り込む。
悪ガキどもはバイオリンの弓でチャンバラをはじめる始末。しかし、ロベルタの率直な人柄に心を開き、子どもたちは鋭敏な力を発揮してグングン上達していく。
やがて、発表会で「キラキラ星」を見事に合奏する我が子の誇らしげな姿に、親の目に涙が光る。
果ては、スターンやパールマンら世界的なバイオリニストと、カーネギーホールで協演することになるのだ!
しかし、このドラマは単なる美談とは一線を画している。
ある日、練習熱心な少年が来ない。母に“行くな”といわれたからだ。
母は、ロベルタを非難する。「頼みもしないのに、スラムの子どもを救う気で乗り込んでくる白人教師が前にもいた」と。
ロベルタも黙ってはいない。「誰を救う気もない。これは自分の子どもを養うために必要な仕事」「あなたは知ってるの? バイオリンを弾いているとき、あなたの息子が輝いているのを」――と。
ロベルタは夫に逃げられ、ふたりの息子を抱えて働き口を見つけねばならなかった。
職場で直面する、人種差別の深い溝。“家族が殺された”と子どもが休むスラムの現実……。家庭では、思春期の息子との葛藤。頼れる夫のいない不安……。それでも、ロベルタは突き進む。音楽への純粋な愛を鼓舞し、子どもたちへの愛と喜ぶ顔に支えられながら――。ありのままの自分をさらけ出し、教師として母として、やるべきことを成し遂げていくひたむきな姿は、美しく、清々しい。
ロベルタは下見でカーネギーホールの舞台に立つ。
劇場を満たしている静寂と圧倒的な威厳がスクリーンから伝わってくる。
そこで、バイオリンの巨匠であり、音楽の殿堂・カーネギーホールの総館長であるアイザック・スターンがロベルタに語る。
「チャイコフスキーもハイフェッツも、ラフマニノフも皆、ここに立つ人を歓迎してくれる。君たちもここの一員だよ」と。