先日紹介した「
エリン・ブロコビッチ」と同じく、実話を題材にした作品。
壮大なアクションやファンタジー大作も小気味良いが、真実の話はそれとは違った感動を味わえる。今まで自分が知らなかった世界で、こんなにもたくましく、切なく生きた人々がいたのだという驚きが胸に迫ってくる。
1963年、黒人ボクサーのハリケーン(デンゼル・ワシントン)は、ウエルター級のチャンピオンにまで上り詰めていた。
華々しい戦績をあげる彼に突然、殺人事件の容疑がかけられる。裁判で無実を訴えるのだが終身刑が宣告されてしまう。
彼は、獄中でも無実を訴え続け、自伝を執筆して出版するやいなや大反響を呼び、ボブ・ディランやモハメッド・アリなどが釈放運動に加わってくれる。しかし、再審も有罪。ハリケーンは絶望し、社会とのかかわりをいっさい断つようになっていく。
古本市でハリケーンの自伝を何気なく手に取ったレズラは、ハリケーンの人生に共感を覚え、仲間と一緒にハリケーンの無罪を勝ち取るために、立ち上がるのだった……。
デンゼル・ワシントンはこの企画が始まった6年前からハリケーン役を切望していた。役にいどむために、27キロの減量とトレーニングを行い1年の準備期間をへてボクサー体形に自分の身体を鍛え上げたという。そのため、ボクシングのシーンも違和感なく受け入れることができる。
さらに、時の経過と共に、ワシントンのまなざしが変わってくるところも見物だ。
無実の罪で投獄されたことに対する怒り、真実は必ず認められるはずだと信じてやまない姿、絶望、孤高の境地、レズラとかかわることによって得る安らぎ、そして信頼――ワシントンの入魂の一作といえそうだ。