ラッセ・ハルストレム監督の作品といえば、子供を見つめるまなざしが温かいことで定評がある。
しかも、原作は「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」などの作品で知られるアメリカ現代文学の巨匠ジョン・アーヴィング。彼自身が13年もの歳月を費やして脚色し、映画化した。
原作者が脚色をすると、原作への思い入れが強すぎて映画としてはわかりにくいものになりがちだが、このベストセラー作家は違った。
そのエキスを抜き取り、一人の青年の成長を描く感動のドラマに仕上げている。
2000年度のアカデミー作品賞、監督賞など7部門にノミネートされ、最優秀助演男優賞と最優秀脚色賞を受賞した。
舞台は1930~40年ごろの孤児院。
ここで生まれ育ったホーマー・ウェルズ(トビー・マグワイヤ)は、ラーチ院長(マイケル・ケイン)に「人の役に立つ存在になれ」といわれ続けて大きくなった。
院長の掌中の玉のような存在だったホーマーもいつしか、外の世界に憧れて旅立つことを決心する。
外の世界は、見たことのないモノばかりだった。初めての海、口にしたことのないロブスター、野外で映画が見られるドライブインシアター。
そして、友情や甘い恋、悲しみ……人とのふれあいを通して今まで味わったことのない感情を味わい、一歩ずつ大人になっていく。
映像が詩的で美しい。
全体の色彩が抑制され灰色に近い田舎の風景。それが、作品の雰囲気にピッタリとマッチしている。
また、孤児院の子どもたちがいい。かわいらしく純粋なのだが、どこか孤独が感じられる。
人間は決して完ぺきでもなんでもない。
愚かで、たくさんの間違いや失敗を繰り返すが、小さな幸せを見つけて一生懸命に生きている。
人間への温かいまなざしと、深い愛が感じられる作品だ。