漆黒からオレンジ色へとグラデーションする、夜明け前の空を飛ぶ飛行機から、パラシュートがついた箱が降ってくる。
影絵のような光景から夜が明けると、箱の落ちた先がペルシャ湾に浮かぶ小さな島だったことがわかる。そこへボートで一人の女の子がやってくる。
今日は選挙。その箱は投票箱で、女の子は選挙管理委員なのだ。
女の子は投票箱を抱えて、その島中を回る。細い声で「私たちの票には社会を変える力がある」と投票を呼びかけるながら。
その横には、選挙の不正を防ぐとの命を受けた島の無骨な兵士が、しぶしぶ彼女のお伴をしている。小娘にも選挙にも無関心。
微妙な二人の対比が、何とも言えない面白さを醸し出す。
さらに有権者たちが、これまたいろいろ。
どの候補者も知らないと棄権する者、数十人の妻を連れていて、彼女たちのぶんを自分一人で投票しようとする者、神に投票しようとする者……。
青い空と海、白い砂浜――美しい島の情景の中を、ゆったりと進みながら、様々な人々が様々に行動する。それを見ているだけで、そこはかとなく楽しい。
もちろん、選挙や一票の重さなどに思いを致すのも良い。
現実でも、この春から夏にかけて、地方と国の選挙が行われる。
ある意味でせっかくのチャンスなのだから、この「
一票のラブレター
」を通して、日本の選挙の雰囲気や空気と、映画の中の様子を見比べてみるのも一興かもしれない。