真っ白な雪に覆われた、ニューヨークのセントラルパークをジョギングする男性。その後ろ姿を追う冒頭の長回しが印象深い。
その男性が不意に倒れて、動かなくなる。そして一転、場面は10年後の残された妻へと移行する。
愛する夫ショーンを心臓発作で失った妻・アナ(ニコール・キッドマン)も30代に。ニューヨークのアッパー・イースト・サイドで暮らしている。今も夫を忘れられずにいるが、何年も待ち続けてくれたジョゼフ(ダニー・ヒューストン)と、ようやく婚約パーティーを開くことになった。
そんな時、アナの前に、見知らぬ10歳の少年が現れ「僕はショーン、君の夫だ」と告げる。夫の「生まれかわり」と主張する少年に、アナの気持ちは揺れ始める……。
ジョナサン・グレイザーは、監督初作品である「セクシー・ビースト」で世界的な評価を受けている。
監督と共同で脚本を執筆し、「存在の耐えられない軽さ」「欲望のあいまいな対象」などで知られるカリエールは、ダライ・ラマとの間に2冊の共著があるとのこと。東洋的な死生観のもつ不可思議さ、深遠さを、丁寧に描写している。
視線を交わし、視ることで曖昧なものが形を成していく。そのようなまなざしが、本作の核となっている。