バガー・ヴァンスとは、ウィル・スミス扮する謎めいたキャディーの名前であり、彼の存在によって全体がおとぎ話のような雰囲気になっている。
物語の中心は、第一次大戦で心に傷を負い、栄光のゴルファーから博徒に身をやつしていたジュナ(マット・デイモン)の再起をバガーが助けるというもの。
また、ジュナのかつての恋人で富豪の娘アデールが、恐慌による破産状態からゴルフ場経営を再建させる。そして、ジュナを慕う少年ハーディの父も仕事を失った。
登場人物たちは、社会の荒波にもまれ、奈落の底にいるが、バガーによって救われていくのだ。
この映画のキーワードは「自分らしさ」。
12年間、博徒の生活を送ったジュナは、自分のスイングを失っていた。バガーは「ゴルフのグリップは人生のグリップ。自分のスイングを見つけろ」とアドバイスする。
人間は、とかく人と自分を比べがちだ。
華やかな人をうらやみ、背伸びしようとする。ないものねだりをする。
いつまでそうしていても、ないものは出てこない。自分のもっているもので勝負するしかないのだ。
人と比べるのではなく、自分らしい生き方こそ、人を幸福にする。
現代には、浮かれた成功者があふれている。そんな成功者に憧れ、夢見る人がいる。
この映画は「自分らしく生きること」こそ、幸福の極意だと教えてくれる。