改めてスティーヴン・キングは、並外れた才能を持つストーリー・テラーだと実感する。
「シャイニング」で、膝がふるえるほどの恐ろしさを味わわせ、「スタンド・バイ・ミー」で、少年たちの揺れ動く心を描き、「ショーシャンクの空に」で過酷な状況の中でも夢と希望を持つことがいかに大切かを教えてくれた。
その彼の原作を新たに映画化したのが「グリーンマイル」である。
時は今から70年前、アメリカが大恐慌のころ。
ポール・エッジコム(トム・ハンクス)は、黒人差別激しい南部の刑務所で看守長をしていた。そこに、2人の少女を殺した罪でジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)という死刑囚がやってくる。
泣き虫で暗闇を怖がる黒人の大男は、とても大罪を犯せるようには見えない。違和感を覚えるポールの周りに、次々に不思議な出来事が起こり始める。
コーフィは、人の心の中を感じ取り、いやすことができ、病を解き放つ奇跡を起こす力を持っているのだ。果たして、神の使いのようなこの男に殺人が犯せたのだろうか?
トム・ハンクスの押さえた演技、同じ看守仲間のデヴィッド・モースの優しさあふれる人柄、マイケル・クラーク・ダンカンの純粋で清らかな心、憎んでも憎みきれない悪役を演じるダグ・ハッチソン、心安らぐ瞬間を演じるネズミのミスタージングルズ、どれもこれもがピタッとはまり役だ。
物語は私たちに訴えかける。
なぜ、こんなに心やさしい人物を死刑という名の下に殺さなくてはならないのか。死刑制度への疑問、人種差別への怒り、人間だれもが持っている本質的な邪悪さを感じなくてはならない悲しい運命、そして、それらすべてを忘れさせ、夢を与えてくれる映画という存在の素晴らしさ――さまざまな思いが見るものの心を去来する。