「ダブル・ジョパディー」とは、二重処罰の禁止の意。だれもが同一の犯罪で二度有罪にはならないということである。アメリカ合衆国憲法修正第5条で規定されている。この法律をテーマに母親の我が子への深い愛情と、夫に対する復讐劇をスリリングなタッチでまとめ上げている。
シアトル郊外に住む主婦リビー。彼女は、実業家の夫ニック、最愛の息子マティと幸せな日々を過ごしていた。
ある日突然、夫殺害の罪を着せられ、刑務所で服役生活を余儀なくされる。親友に預けた息子のことが心から離れないリビー。行方知れずになった2人を探し当てた彼女は、衝撃の事実を知る。死んだはずの夫が生きていた……。
戸惑いと混乱のふちに突き落とされた彼女に、ある女囚が「ダブル・ジョパディー」という言葉をささやく。そのひとことがリビーを奮い立たせた。夫への復讐と息子との再会を果たすために、一日も早い出所を待つリビー。
そして6年の月日が経過し、仮釈放の日を迎えた彼女は保護監察官トラヴィスの監視下に。ついに彼女の逃亡と追跡の日々が始まる……。
リビー役を演じるのは、アシュレイ・ジャッド。傷つきやすいもろさと強さを備えた母親役を体当たりで見事に演じている。トミー・リー・ジョーンズが保護監察官役に。いつもながらの重厚な演技で、作品全体を引き締めている。
監督は、オペラの演出も手がけるブルース・ベレスフォード。
日本の法体系においては、あまり馴染のない二重処罰の禁止という制度。その法律の盲点をつくかのようなドラマの筋立てが巧みである。
始めから終わりまでスリルあふれるシーンの連続で、アシュレイ・ジャッドの熱演も特筆すべきだろう。対照的に我が子に対する深い母の愛情が、物語全体を温かく包み込む。
ラストシーンの心安らぐ瞬間は、現代における一種のカタルシス劇としての効用をそなえているといっていい。
母は強く、偉大である。
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