ジャンヌ・ダルクといえば、知らない人はいない500年前のフランスの英雄だ。「神のお告げを受けた」と祖国を救うために戦い、勝利に導いた後、魔女として火あぶりにされる。
ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるジャンヌ・ダルクは、実にエキセントリックでいちずだ。フランスを守るために、シャルル7世を戴冠させるために、まるで憑かれたように戦い続ける。田舎娘で戦った経験などまるでないのに鎧に身を包み旗を振り上げ「フォロー・ミー!」(私についてきて)と叫ぶ。戦いの先頭に立って、荒くれ兵士たちの士気を高め勇気を鼓舞する。「ここに神の意志がある。だから決して負けはしないのだ」と。
ここでのジャンヌは聖処女というよりも、人間くさい。神の言葉を信じ突き進むのだが、多くの血が流れる戦場を見て動揺し、裏切りに怒り、神の愛を疑う。
だれもが最初は小娘だと馬鹿にして自分についてこないことに腹を立てたりする。また、火あぶりを恐れ、神に助けを乞う。
私たちとはかけ離れた歴史上の人物だったのが、一気に等身大の人間として、もし自分だったら、もし同じ立場だったら、と考えざるを得ないような目線で描かれていく。血にまみれる戦争の狂気に放り込まれた少女は、さぞ怖かっただろう。
監督は、「グラン・ブルー」や「ニキータ」でフランス映画界の地位を不動のものとし、「レオン」「フィフス・エレメント」でハリウッドに打って出たリュック・ベッソンだ。彼は、ジャンヌ・ダルクという人物を徹底的に研究しベッソン流の解釈で、独特の映像世界を作り上げた。神の啓示の描写は圧巻だ。
歴史は語る。勝つためには勝利への信念がなくてはならず、さらに気をつけるべきものは嫉妬とねたみであるということを。